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2007.04.03

一番重要なことは語られない

「人は努力したことしか語らない」というお話。
あるいは「本当に大切なことはことばにしない」というお話。

マーク・ロスコは、あの色が美しい。言ってみればあの色の構成が美しい。
かつて「日曜美術館」でマーク・ロスコの特集を組んでいたことがある。
その中でゲストに来ていた女性が、ロスコの色の美しさに虜になった、という話をしていた。もちろんこれは正しい評価だと思う。
しかしロスコ自身は、色よりも面積比の方が大切だと述べている。例えば赤と黄の色構成であれば、それぞれの色の配置、赤と黄の色味そのものよりも、面積が重要だと言っている。
司会者がゲストの女性に、ロスコ自身はそう述べているんですが、いかがでしょうか、と訊いた。
彼女は、それは驚きだ、私はあの色の美しさに眩暈がするほどだったのに、と言った。

例えば、アートでも建築でも漫画でもイラストでもいいんだけれど、テクニックの優れた人ほど、テクニックなんかどうでもいいんです、心の方が大切なんです、と言う。

こうした多くの共通した巨匠、達人、匠たちの言葉を聞いて、われわれ凡人が鵜呑みにしてしまうと痛い目に遭ってしまう。

たとえて言うなら、こういった質問は、背の高い人にあなたはなぜ背が高いのですかと訊くことと同じ。アメリカ人にあなたはどうしてアメリカ人なんですかと訊くのと同じこと。そんなの知らん。訊く方がおかしいんちゃうのん。

ロスコは、色に関しては天性の才能を持っていた。色そのものを表現するのは彼にとってはなにもむつかしいことではない。
だから彼が自分の頭にある色をより表現するには面積比だけを慎重に考える必要があったのだ。

テクニックの優れた人が心が大事という言葉を鵜呑みにして、テクニック(技術)を怠ると心すら表現できなくなってしまう。

偉人の自叙伝や文章を読んでもそこにだまされてはいけないのだ。

    ☆

更にもうちょっと身近なお話。

ミクシィを退会した友達と飲んだ。
とても美人でミクシィのトップに自分の写真も載せていた。
綺麗な人なのに写真なんか載せて大丈夫かいなと心配ではあったが、そのうち顔写真が消え、日記も消え、やがて退会した。
ご本人は飽きっぽいから辞めちゃった、と言っていたけれど、本当は違っていた。
男性からのエロいメッセージが多い時には100通を越えていたり、どこからどうやって調べたのか職場に電話が掛かってきたり、とストーカーにあってしまい大変だったようだ。
ぼくにしてみればだいたいそんな顔写真載っけるし、たしかメルアドも載せていたからだと思っていて、いろいろ話をしていると、ちょっと驚きのコメントだった。
彼女は美しくなろうとして美女になったのではなかったのだ。
よく女性からも、どんなシャンプー使っているんですか、とか洗顔クリームは何ですか、新しく服をデザインしたいんですが、一度見てもらっていいですか、など。
本人は、別に親父のシャンプー使って、洗顔も普通に洗面所にある石鹸だし、まったく自分に関してお金をかけない人だったのだ。
というかですね、自分がまさか綺麗な人だとは思いもしなかったので、誰かが自分の写真を出してみても、ストーカーにあうほどのものなのかと無頓着だったそうだ。

違う話のようで同じような話じゃないかと並列させてみたりした。

でも実は同じ話です。

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